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あるお坊さんの話

明日を見て歩け! 1

寺にあらわれた浮浪者

今日(12/18)夕方、浮浪者が物乞いに来ました。
女房達は買い物に出かけて一人でした。
玄関で「すいません」と声がするので下りてみると、何の挨拶もなく、いきなり、「何か食べ物を」ときたもんだ。
適当に物をやって、追っ払うのは簡単ですが、下手になつかれても困りもんです。

悪いのは世の中・・・

「どっから来たの?」「神戸です」
震災ボランティアをあてにして、全国から浮浪者が集まったと言う話を聞いたことがあります。
おそらくそんな一人なんでしょう。
見ると、足下がふらついてまっすぐ立っていられない。
酔っているんです。
こんにゃろめ、どこで酒を手に入れたかと思いつつ、「あんた酔ってんな」「・・・はい」  案外素直。
しばらくふらつくまま立たせて、話を聞くうち子供の頃、日蓮宗のお寺で小僧をしていたと言うんです。
ふと見ると、彼の右手が変だ。薬指が曲がっている上、指が四本しかない。
おそらくみんなにいじめられ、虐げられて育ったんでしょう。
お寺でもどうもいじめられた風なことを言っていました。
話すうちだんだん酔いが醒めてきて、良いとも言ってないのにすのこに座り込んできて、おそらく、ここが日蓮宗のお寺だと分かって嬉しかったんでしょう、目を輝かせて話をし出したんです。
小学校5〜6年の頃お寺を出て、以降どうやらこういう生活みたいです。
聞きかじりの仏教用語を交えながら、「日本は贅沢だ」「政治家は努力が足らない」・・・等々
要するに、自分の境遇に対する不満を、社会への文句や愚痴にすり替えているだけ。
それでも少しずつ、冷静さを取り戻してきて、自分の罪を告白しました。
お酒は、どっかのお寺から失敬してきたんだってさ。

自分の両足で歩かなきゃ

彼の気持ちが落ち着いた頃、「アフリカの草原にいることを想像してごらん、自分で何とかしないと、猛獣に食われたり毒蛇に咬まれたりするよ。
今の社会に生きることも同じだよ。自分で何とかしなきゃ」
妙に納得する彼。パンと飴を少々あげ、「せっかく人間に生まれたんだ。自分の命、自分の人生だよ。
自分の両足で歩かなきゃ。私があなたにしてあげられるのはこれだけ。でも、これだけは約束して。
ゴミがでるけど、道に散らかさないでね。
そして出来れば、これからまだまだ歩き回るだろうけど、道にゴミが落ちていたら、それを拾ってどっかごみばこに捨ててあげてよ。お願いね」
「有り難う、よう言ってくれた、有り難う」と涙を流しながら出ていった。

荷物がない?

しばらくして、女房達が帰ってきた。
「お客さんだった?」「・・・うん、何で?」「下の道でうろうろしてたよ」
出かけるふりをして、出てみるとやっぱりいる。
「どうしたの?」「荷物がないんです」
さっき来たときは、傘しか持ってなかったはずだが「どこに置いたの?」
寺の門の所がどうしたこうしたと、さっぱり要領を得ない。
もう一度寺を探すというので、良いよと言い、そう言えば、寺に来る前に駐在へ行ったとか言っていたので、駐在へ行ってみることにした。

こそ泥だよ

「さっき浮浪者、来ました?」「ええ、来ましたよ」
「荷物、持ってました?」「うん、リュックとか傘とか持ってたよ」
「ない、といって探し回っているんですよ」
「しょうがねぇ奴だなぁ」
・・・・・
「どうせ叩けば埃の出る身なんでしょう?」
「そう、奴は北海道出身で、名前は・・・」
案の定、前科17犯、窃盗や強制猥褻などのたぐい。
「この手の奴は大きな事の出来ない、こそ泥の部類だよ。」
さすが日本の警察、すぐ分かっちゃうんだな、と感心しつつ「では、私も気をつけてますけど、宜しくお願いします」と、駐在を出る。

やっぱり、荷物ないんです...

寺には既に彼の姿はなく、訪ねても来なかったと言う女房。
どうしたかなと思いつつ、風呂に入って食事をしていた。
すると、ぽんたが吠える。玄関がピンポンとなる。
出てみると、彼。
「やっぱり、ないんです。」
「どこに置いたのか、おぼえてないの?」
そう言えば、酔っぱらっていたな。覚えてないのかもしれない。
「さっきのパンはどうした?」
「向こうに置いてあります」
「野良犬がもってっちゃうよ、ちゃんと持って歩きなさいよ」
「ああ、そうか」・・・だってさ、呆れちゃった。
「どうもすいませんでした。もう一度よく探してみます。」
しばらくぽんたが吠えていたので、探していたんだろう、やがて静かになり、私も床に就いた。

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