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あるお坊さんの話

明日を見て歩け! 2

荷物は本堂にあった

朝起きてふと見ると、本堂の脇になにやらある。
彼の荷物であった。
こんな分かりやすいところにあって、何で探せないの?
彼にとっては、生活必需品。おそらく毛布なども入っているんだろう。
ゆうべはどうしたんだろう、この寒空の元。
また、駐在へ行った。

彼らの居場所は、日本には、ない

「荷物、ありましたよ」
「あ、そうですか。で、どこに?」
「本堂の脇の、非常に分かりやすいところ」
「まったく!!ゆうべあれからまた来て、駐在に隠してないかって言うから、とうとう怒っちゃいましたよ」
「ろくに栄養摂ってないでしょうから、目も悪いんでしょう」
「ああ、なるほど」と駐在さんも多少同情気味。
「ゆうべどうしたんでしょうね」
「九時頃、一回りしたんですけど、どこにもいませんでしたよ」
「じゃあ、もお行っちゃったんでしょうかねぇ」
「さぁねぇ」
彼は九州を目指していると、駐在さんに言ったそうである。
九州かぁ、歩くと遠いなぁ。
どうせまた、生活に困るとこそ泥をするんだろうなぁ。
「そう、そうなんですよ、ああいう輩は」
かつて、彼らのために市町村役場で旅費を工面する制度があった。
それは私も聞いて知っていた。
しかし、最近は数が多くなり、負担が大きくなって、どこの役場でももうしなくなってます、と駐在さん。
「今の日本の社会には、彼らがいれる場所がないですね」
「ええ、そうですね。刑務所だけなんですよ。」
「お寺に私一人なら、彼を泊めてあげることもできますが、家族がいますから・・・。」
日本の社会は、お寺も変わってしまったんだなぁ。
「荷物、しばらく預かっておきますので、彼来たらお寺によこして下さい」

幸せって?

人間に生まれれば、それは幸せなことだと言われる。
しかし、彼らを見るとその自信が揺らぐ。
うちのぽんたとどっちが幸せなんだろうって。
更に、たとえ犬に生まれても、盲導犬や聴導犬として、人に尽くして一生を送る犬の魂と彼らの魂、一体どちらが仏に近いんだろうか、とも思う。
しかし、現実に彼らは苦しい。
自分で歩けと口で言うのは、簡単なこと。
学もなく、資格もなく、具体的な手段なんて分かろうはずもなく、彼らに対して、今の社会で一人で生きろなんて、幼稚園や保育園の子供に一人で生きろって言っているような物。
溺れている人間に、能書きをたれてもしょうがない。
つくづく、マザーテレサはすごい菩薩だなと思う。
私には、目標には出来ても真似は出来ない。
自分のいたらなさをおもいしるのみ。
彼の名前と生年月日を駐在さんに教えてもらったので、せいぜい彼のために、祈ってあげよう。
今の私に出来ることは、それだけだ。

荷物は戻ったが・・・

二日後の今日(12/20)、車で出かけたとき、近所をふらふらと力無く歩く、彼を見つけた。
車を降りて声をかけた。
「あのぉ、荷物が見つからないんです・・・」
「あったよ、荷物。本堂の脇のすぐ分かるところだったよ。しっかり探さないからだよ。しまってあるから、すぐお寺に行きなさい。女房いるから。」
と、彼の背中を叩くと、「はい!」と実に嬉しそうに、歩いていった。
用事を済ませ、寺に帰ると、荷物は無事彼の元に戻っていた。
二晩、寒く心細かったであろう。
今頃どこを歩いている事やら。

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