泣いていますか?



私は幼い頃とても泣き虫だった。兄とケンカする度に泣いて親にすがっていった記憶がある。

最初は嘘泣きもあったかもしれないけれど、しだいに感情のままに泣いていたような気がする。

しかし、小学校の高学年くらいになると他人の前ではもちろん、家族の前でも泣かない子になった。

泣きたいことがなかったわけではない。ただ、誰かの前で涙を見せることができなくなった。

学校でとてもつらいことがあっても、友達にいじわるされても、けっして親の前では泣いたりしなかった。



そうして、めったなことでは一人の時でも泣かなくなって、いつの間にか二十歳をすぎた。

感情をあまり表現しない子だったためか、中学・高校の頃は年のわりに落ち着いているとか、

親しい友人などからは「冷たいね」ってよく言われたりもした。

そんな自分のことを別に変だとも思わなかった。「そう私は冷たいの」って自分からもよく言ってたし

それが”わたし”だと思いこんでいたから・・。

社会人になってからも相変わらず、泣かない日々は続いた。それが、ある日突然、

あることをきっかけに、それまでたまっていた涙があふれるようにでてくるようになった。



あることというのは、私が以前通っていた心理学の教室での”インナーチャイルド”のワークショップ

のことだった。インナーチャイルドとは自分の中にいる子どもの存在のこと。詳しい説明は省くけれども、

そのたった一日のワークショップで、私は自分の中にいた小さな子どもを発見した。

そして、幼い頃から泣きたいことはいっぱいあったのに、泣かないように自分が我慢をしていたことを

後からあとから思い出した。その時は自分でも信じられないほど、知らない人の前で平気で声をあげて

泣いた。あぁ〜私の中にはこんなに涙がたまっていたのか、、と自分でもびっくりした。

(あえて書きますが、こういうワークショップ系のものは怪しいものからまじめなもの?まで
たくさんあると思います。この時はたまたま私にとって、今まで知らなかった(忘れていた)自分自身
の存在を知る一つのきっかけになったので上記のように書いていますが、同じ事を他人に勧めようとも
思わないし、その後必要以上にのめり込むということもありませんでした。)



一旦他人の前で平気で泣けるようになると、これでもかというほど突然、場所や周りの状況も考えずに

涙が自然とででくるようになった。このころは一人暮らしをしていた頃だったので、自分の家にいるときは

もちろん、通勤電車の中や街を歩いていても、フッとしたことがきっかけで過去の記憶を思い出し、

その度に、その思いにひたって泣いた。

でもまだ知人や親しい人の前ではなかなか泣くことに抵抗があった。

きっと、「泣くこと=恥ずかしいこと」という図式が小さい頃から私の中で自然とできていたのだろう。



辛いことや悲しいこと、苦しいこと(時には切ないこと、嬉しいこと・・)に出会ったとき、人は涙を流す。

それって、とても自然で当たり前のことなんだよなぁ〜って、思えるようになってから

はじめて、だれの前でも泣けるようになった。自分が大切に思う人の前でも。

それから、心を許した人の前でなければ泣きたくても泣けないんだなぁ・・・ということ

をあらためて実感した。泣けなかった頃の私は、他人はもちろん、自分自身にも心(本音)を許して

いなかったのかもしれない。泣くのは恥ずかしいとか、みっともない、とか世間体ばかりを気にしてね。



泣きたい時には、思いっきり泣いていいんだよ。ひとりぼっちで我慢しなくてもいいんだよ。

涙は、固く閉ざしたこころを癒す。そして、一通り泣き終わったころにはグーンと楽になるからさ。



あなたは、思いっきり泣いていますか?心に素直に泣けますか?



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